身近な食べ物のお話
春の食べ物
玉葱独活アスパラガス菜の花牛蒡椎茸イチゴ

  
  玉 葱


  玉葱はあらゆる国の料理にはなくてはならない野菜で、調理の仕方によって千変万化します。長期保存が可能で、家庭の常備菜になっています。

 世界的にあまりにも広く栽培されているので、原産地は定かではありませんが、紀元前3000年ごろのエジプトですでに栽培されていたようです。ヨーロッパ全土に普及するのは16世紀と意外と遅く、食料の乏しかった当時たいへん重宝されました。

食用意外にその頃の玉ねぎの面白い利用法として結婚占いに使っていたそうです。結婚前の娘が言い寄ってくる男たちの名前をひとつづつ玉ねぎに書いて暖かい部屋においておき、何日かして一番早く芽の出た玉ねぎに書いてある名前が結婚相手にふさわしいという他愛もないことですが、現在でも使えそうな占い方法です。

日本には、江戸時代の初期に南蛮船によって初めて持ち込まれましたが、一般に広く食べられるようになったのは、明治10年頃北海道と大阪で栽培に成功してからです。わが国において玉ねぎは、まだ100年ほどの歴史しか持たないのに、今や世界有数の玉ねぎ消費国になってしまいました。これは家庭料理の人気メニュー、カレー、ハンバーグ、どんぶりに玉ねぎが欠かせない食材だからです。

 玉ねぎの種類は多く、4月には愛知・佐賀、5月には大阪・和歌山・兵庫、6〜7月には栃木・長野から、8〜9月には北海道産が店頭に並び、保存が可能なので、1年中でまわっています。

新玉ねぎと黄玉ねぎはまったく品種の違うもので、下記のような特性があります。
新玉ねぎ(白玉ねぎ) 玉ねぎ(黄玉ねぎ)
甘みがあり、柔らかい 比較的にがみがある
糖度 12度以上あるものもある 10度前後
食べ方 サラダに最適 水にさらして冷やしたり、煮込んだりすることによって、うまみが増す。



  
独活(うど)


ウドは、ウコギ科の多年草で、日本原産の野菜です。江戸時代には、すでに野生種に土よせし、軟化栽培が行われておりました。

 旬は春。とくに三月から四月が出盛りで、ウドの姿を見ると春の訪れを感じます。ところがこの数年、温室栽培のものがたくさん店頭に並ぶようになり、一月にすでに店先に山積みされたウドを見かけるようになりました。ウドだけではなく蕗のとうやたらの芽といった季節限定品であった山菜類も時期はずれに安価で手にはいるようになってしまいました。しかし、温室の軟化栽培のウドは、芳香、栄養分共に天然物にはかなわず、やはり本来の旬である季節に食べたい食材です。

 ウドの栄養素の主体は糖質で、若芽には炭水化物、ミネラル、少量のタンニン、精油、酵素、ビタミンB2、Cなどが含まれており、和え物や野菜ジュースにすれば、特有の香りと苦味が食欲を増進させます。

この苦味には整腸作用、健胃作用があり、漢方では、体表の熱や毒をとる働きがあるとされ、関節の腫れや痛み、体毒を目標に用います。

 ウドだけではなく、春先の野菜や山菜類は一般に苦味の強いものが多く(菜の花、蕗のとう、わらび)こういうものを食すことにより、寒気で機能が低下した胃腸に活力を与え、春の活動期にあわせ体を順応させる働きがあるとされています。ヒトが生きていく上で、環境に順応できるような体つくりを、自然の産物が助けてくれているのだとも言えます。

 「ウドの大木」というように、大きくなると何の役にも立たないかと思われていますが、なんのなんの。成長するに従って、次から次へと出てくる新芽を指の先でつまんで天ぷらにすると、これまた美味。味や香りが似ているたらの芽もやはりウコギ科の植物で、山菜の女王とうたわれていますが、ウドの方がたらの芽より採取が簡単で濃厚な味です。8月のお盆前くらいまで、楽しめます。
くるみみそあえ
ウドは熱湯に湯をいれ、さっとゆがき、冷水でさます。酢の物、和え物、汁の実などにするとよい。生食の時は皮をむいて、うすく切り酢水につけてあくをぬき、サラダなどに使う。

くるみは、生のものを油であげるかフライパンでいり、すり鉢ですって、さとうとしょう油で味付けする。

下ゆでしたウドを好みの大きさにそぎ切りし、すったくるみとあわせみそであえる。(量は好みで加減して下さい)



  アスパラガス


 子供のころの記憶をたどると、アスパラガスは真っ白でした。今はグリーンアスパラガスが主流で白いものは人気がなく、ほとんど見かけることはなくなりました。出芽する前に盛り土をして白色軟化させたものがホワイトアスパラガスで、土寄せをせずそのまま生育をさせたのがグリーンアスパラガス。両方とも元は同じものです。

 ヨーロッパ原産のアスパラガスは、江戸時代の終わり頃長崎に伝えられ、明治になって広く栽培されるようになりました。北海道などの冷涼な気象条件の土地に合い、初期は缶詰加工用のホワイトアスパラガスが主流でした。グリーンアスパラガスは昭和40年ころより出回り、最近はこちらがすっかり主流になりました。

 アミノ酸の1種であるアスパラギン酸を多量に含んでおり、栄養価の高い野菜です。アスパラギン酸は生体内の代謝に重要な役割を果たす物質で、植物界に広く分布しており、1806年にアスパラガスのなかに初めて発見されたのが名前の由来になっています。また、アスパラは野菜の中でもたんぱく質と糖質が比較的多く、高血圧を予防し血管を強化するというビタミンのルチンは先端部に多く含まれています。グリーンアスパラガスはホワイトアスパラガスに比べ、カロチン、ビタミンB2、繊維質が多く旨味も強いのが人気の秘密のようです。

 たくさん手に入ったときは、さっと茹でて冷凍しておくと、生のままで数日間冷蔵庫に入れておいたものより栄養や香りが長持ちします。

 野菜の中では珍しい多年草で雌雄異株、地上部は毎年枯れてしまいますが、地下茎は枯死することはなく、毎年多くの太い若芽を出します。我が家でも栽培したことがありますが、毎年次々と芽がでて7年間くらい楽しめました。とりたてのアスパラガスの味は最高です。簡単に育てられるので種苗屋さんで根茎を買い求め、植えてみてはどうでしょう。


  
  
 菜の花

  春になると通勤途上の大和川の土手に黄色い花がいっせいに咲き、それは見事な黄 色いじゅうたんを敷き詰めたようになり、目にも春爛漫を告げてくれます。この黄色い花 は菜の花だと思っていたのですが、実は西洋からし菜そうです。日本中いたるところで  外来種の植物がはびこり、在来種がめっきり少なくなりました。しかし、花の部分が食べ られるのは、菜の花に限った事ではなく、西洋からし菜でも大丈夫。アブラナ科の植物  であれば何でも美味しく食べれます。白菜や水菜を畑に植え、取残したまま春が来ると とうがたってきて花が咲きます。この花も菜の花と同じように食べられます。寒い時に葉 をいただいて、春になると花を食べ二度楽しめるのです。
 
  青果市場で売られている菜の花は、アブラナの若いつぼみと茎葉を摘み取ったもの  で、農業関係では「菜の花」ではなく「菜花」(なばな)と呼んでいます。菜種油を採るため に紀元前から世界中で広く栽培されていましたが、菜花が食べられるようになったのは 明治時代のことです。産地の人が食べてみて、以外にいける!ということで食用になっ たそうです。最近は12月ころから出回っていますが、本当の旬は3月です。

  ほかの野菜に比べ、苦味があるのが特徴で  寒い冬の間活動が停止していた胃の働きをこ  の苦味で刺激し、春の活動期に合わせて活性  化してくれます。菜の花は見かけによらずかたく て灰汁が強いので、生のままで使うことはできま せん。

  サラダなどに入れる時も軽く塩茹でしてから調理してください。熱を加えることによって、ビタミン類が壊れたり、水溶性の成分が溶け出したりしますが、菜の花にはそれに負けないだけの栄養が含まれています。

  栄養としては、ビタミンA,B,Cの含有量が高く、ほうれん草以上です。また、鉄分、カ ルシウムなどのミネラル成分がバランスよく含まれているため、粘膜の強化、風邪や感 染症の予防、便秘解消など、さまざまな効果が期待できます。消炎・抗菌作用の強い菊 花は、菜の花の効用を強化してくれますので、食べあわせとして適しています。


  
   牛蒡(ごぼう) 

  ごぼうはユーラシア大陸の北部に広く自生しています。日本には10世紀以前にごぼ  うの種が薬として中国から伝わりました。牛蒡子(ごぼうし)と呼ばれ、漢方では抗菌作  用、解毒作用、利尿作用、血糖値降下作用のある薬として使われています。好奇心旺  盛な日本人がその種を植えてみたところ、根もまた美味しいものだと発見し、栽培する  ようになりました。世界広しといえども牛蒡を食用にしているのは、日本人だけのようで、 シャキシャキした歯ざわりと独特の香りが欧米人には合わないらしく、「日本人は木の根を食べている」と思われているようです。この独特の歯ごたえは、炭水化物の一種のイヌリンと繊維質のセルロースです。健康維持のため食物繊維をたくさん摂りましょうと呼ばれている今日、牛蒡の中の食物繊維は、野菜の中でもトップクラスの含有量で、腸の掃除をしてくれるので便通がよくなります。

  ところがこの牛蒡、店頭に並んでいるものは 中国産がずいぶん増えてきました。日 本人が中国で現地の人を指導して、日本向けの輸 出用に栽培されたもので、国産物に比べ値段が安く規格がそろっているのが特徴です。この中国産の牛蒡に残留農薬発が性物質が検出され、新聞紙上をにぎわしたのはつい最近のことなのですが、今ではほとんど忘れられているようです。のどもと過ぎればすぐ忘れてしまうのが、日本人の悪い性質なのでが、普段口にするものの安全性には常に注意を払ってゆきたいものです。

  店頭に並んでいる牛蒡は1メートル以上もある長くてまっすぐなものが多いのですが、どうしたらあんなにまっすぐ地中に根を下ろすことができるのかご存知ですか。大規模栽培農家では、ロータリートレンチャーという大きな円盤状の刃で畑の畝を1メートル以上も深く掘り起こしその上に種を蒔きます。収穫 時には、ルートディガー(根の掘り取り機)で畝の土を深くきり崩して牛蒡の根を浮き上がらせて抜きやすくします。牛蒡の栽培は難しいようです。

  牛蒡にもいろいろな種類があり、料理に一番よく使うのは瀧野川牛蒡。長さ1メートル、太さ2〜3センチで長根牛蒡の代表品種です。江戸時代の初めから東京の滝野川付近で栽培されていました。この滝野川牛蒡を特殊栽培したものが堀川牛蒡で、長さ50センチ、直径が6〜9センチと太く、真ん中に穴が開いており、これに詰め物をした料理は京都の正月には欠かせないものです。千葉県の大浦牛蒡も中に空洞のある品種ですが、栽培量はわずかです。

  大阪には郷土野菜として河内平野で栽培されている葉牛蒡があります。福井県の越  前白茎牛蒡と同じ系統で春先から今頃にかけて関西を中心に出回り、柔らかい葉柄と 若い根を食べます。香りが高いのが特徴で、春を届けてくれる野菜として親しまれてい  ますが栽培地を少し離れると、蕗と間違う人も多く、料理法は一般に知られていないよ  うです。

  今回表紙絵になっているのは「新牛蒡」で初夏に出回るので夏牛蒡とも呼ばれていま す。直系1.5センチ前後で柔らかく香りもよいので柳川鍋には欠かせません。

  牛蒡は乾燥すると堅くなり、うま味や香りが抜けてしまいます。泥つき牛蒡は新聞紙に 包んで冷暗所で保存して下さい。


  
   椎茸(しいたけ) 

   戦後、日本中が食糧不足、栄養不良に苦しんでいた頃、しいたけは繊維ばかりで栄養のないものと軽んじられていましたが、現代のように飽食の時代になって、成人病に蝕まれている人が増えてくると、一躍健康野菜の筆頭に揚げられ、しいたけの効用については多くの人の知るところとなりました。時代の流れとともに重要視される食材も変わってゆきます。
 栽培されるようになったのは400年位前で、そのころの栽培方法は、山で自然に発生したしいたけの胞子が風に乗って飛来し、あらかじめ、なた目を入れた原木に自然に付着するのを待つ、といった気のながいやり方でした。明治に入って科学的に研究が進められ、昭和10年にしいたけ菌の純粋培養に成功し、現代のようにほだ木に菌を植え付けるしいたけ栽培が行われるようになりました。そのおかげで今では、年間を通じてしいたけは、安定して供給されています。
 露地物のしいたけが発生する適温は1015度で、春と秋に発生します。私も三重県の山の中で春しいたけを栽培していますが、暦を知っているかのように毎年春のお彼岸にいっせいに出てきて、5月以降になるとほとんど発生しません。しいたけの菌を植え付けるのはコナラ、カシなどの枯れ木ですが、間伐材として多くでる杉の木が使えたら、廃材の利用として有効だと思うのですが、杉の木ではダメなのです。
 しいたけの品質の良し悪しは、湿度や温度と関係が深く、傘の開き方の程度で
どんこ」と「こうしん」に分けられます。低温で生育したものは発育が緩慢なため、肉厚で弾力のあるどんこになり、さらに低温で湿度が高いと、表面に亀裂の入った「天白どんこ花どんこ)」と呼ばれる最上級品となります。逆に高温多湿では、しいたけの生育が早くなり、大型で肉の薄い「こうしん」となり、品質は劣ります。ご存知でしょうが、しいたけの効用について箇条書きにしてみますと @ コレステロール低下作用:成分のレチシンによる働き
   A 血圧降下作用:毎日続けることで効果あり
   B 
抗ウイルス効果:インフルエンザを抑制する働きがあります
   C 
抗腫瘍効果:体の免疫効果を高めて、抗癌作用を発揮します
   D
食物繊維の効能:動脈硬化・腸内整腸など多くの効能があります
   E
ビタミンDの効能:骨粗しょう症予防に効果あり
 これ以外にしいたけが優れている点は、200度の高温で処理しても有効成分が変質しないという事と、一緒に調理したほかの食品のビタミンB類を破壊せずに残すというすばらしい働きがあることです。

                                                        
                                                        

 
 イ チ ゴ

私の誕生日は524日。今も昔も変わりません。子供の頃、この日には町中の八百屋さんの店先にイチゴが山積みされていました。木の箱に入ったイチゴは「朝取り」と手書きされ、目にも鮮やかな色で子供たちを呼んでいます。小学校5年生のときに、母親に頼んで誕生日プレゼントを現金でもらい、そのお金で買えるだけのイチゴを買いました。子供には大きすぎる紙袋にイチゴがいっぱい。言葉に出せない満足感とともにイチゴの袋を自分の部屋に持って入り、独りほくそえんで食べた記憶があります。私とイチゴの甘酸っぱい関係です。
 それから何年たったでしょう。私の誕生日は変わりませんが、イチゴの旬はすっかり変わってしまいました。出荷ピークを迎えるのはイチゴケーキの売り上げと重なるクリスマスだそうで、栽培方法も露地栽培からハウス栽培になり、自然の中ではありえないイチゴの旬が人工的につくられてしまいました。本来5月が旬であるイチゴは、太陽の光をいっぱいあびたこの時期のものが一番おいしいと考えるのは素人だそうで、栽培農家の人いわく、「時間をかけてゆっくり成長する冬のイチゴの方がおいしい」そうです。
 18世紀にオランダで、南アメリカ原産のチリ種に北アメリカ原産のバージニア種を交配して育成されたのが現在のイチゴのルーツです。日本には江戸末期にオランダから伝えられたので、当時はオランダイチゴと呼ばれていました。様々な品種改良が試みられ、1980年代の半ばに登場した「女峰(にょほう)」と「豊の香(とよのか)」は圧倒的人気をはくし、この2品種で10年以上にわたり全国の生産量の90%を占めました。
 ここ
数年は、新品種のラッシュとなり、店頭には見かけない形のものや、聞きなれない名前が並んでいます。最近のイチゴの品種を列挙してみますと:「とちおとめ」(栃木県生まれ。平成12年度には、とよのかを抜いて全国1位)、「章姫(あきひめ)」(最近大阪でも見られるようになりましたが、誕生地は静岡県。細長い三角形)、「さちのか」(福岡県生まれでビタミンCの含有量はイチゴの中ではトップクラス)、「さがほのか」(佐賀県産。果肉が硬く甘みが強い)、「濃姫(のうひめ)」(岐阜県生まれ)、「甘王(あまおう)」(大粒で味が濃い)、「ももいちご」(徳島県でのみ栽培、大きくて甘くてジューシー)。このほかにも、あすかルビー、とよのか、女峰など、いちごの品種の多さには驚かされます。
 栄養面では、ビタミンCが豊富に含まれていることが良く知られています。可食部100g中に80mgのビタミンCが含まれており、人が1日に必要な50mgは、56粒食べるだけで必要量を満たすことが出来ます。いちご以外の食材でビタミンCの含量の高いものもありますが、人気や手軽さから考えると、ビタミンCの補給源にはいちごが最適でしょう。最近の研究で、いちごに更なる有効成分が含まれていることがわかりました。活性酸素の働きを抑制するアントシアニン、抗癌作用が認められているエラグ酸です。

 3 月も今頃の時期になると、少々形は悪いけれどお安いものが出回ってきます。いちご酒を作ってみてはいかがでしょう?引き上げた実を使ってジャムも作れます。いちご酒のつくり方:〈材料〉いちご1Kg、ホワイトリカー1.8L、糖分200g〈つくり方〉いちごは洗ってヘタをとり、水気をふいてすべての材料と一緒に漬け込む。2ヵ月後、実を引き上げて濾したら出来上がり。レモンの輪切りを好みに合わせて加えても良ろしいでしょう。