漢方の話
陰と陽 
古代中国の人々は、自然界に起きる様々な現象や存在する物質を、『陰』と『陽』の2つに分けて考えていました。

 例えば、『陽』の男性に対して『陰』の女性。自然界の移り変わりでは、春夏の陽性に対して秋冬の陰性。1日の変化では、朝昼の『陽』と夕夜の『陰』。この相対する『陰』と『陽』のどちらが上位でどちらが良いかということを問題にしているのではなく、すべて物事には裏と表があり、その両方が必要なのです。

 日向があると必ず日陰があるように、物事の表をはっきり定義づけて決めてしまうと、必然的に裏が決まり、その物を両面から見れることになります。

 自然界におこる事象の陰と陽は絶えず入れ代わり、決して同じところに留まることはありません。暑い夏はいつまでも続く訳はなく、秋が来て冬が来ます。そして再び花咲く春がめぐってくるのです。1日の変化の中でも、朝昼夜と留まることなく循環しています。

 こういう見方で人の病気を見てみますと、病気にも『陰』の病と『陽』の病があることになります。最も一般的な病気の「風邪」を陰と陽に分けてみますと、陽性の風邪は、ぞくぞくっと寒気がしてきたなと思ったら発熱してくる。顔色は赤く脈拍数は増加し頭痛が起こってきます。この時後背部にこわばりがあれば、「葛根湯」が適しています。これに対し陰性の風邪は、ぞくぞくした悪寒に襲われるのは同じですが、発熱は起こらず青白い顔をしています。高齢者や病気療養中の人たちは、往々にしてこちらの病状に進みやすいものです。この種の風邪は「陰性の風邪」と呼ばれるもので、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)が合います。

このように漢方では様々な病気に対して陰と陽に分けて考え、各々の症状に適合した漢方薬の使い方の指示がされています。

 西洋薬の風邪薬はというと、表面に出てきた症状の対処法しか考えていません。発熱があれば解熱薬、くしゃみ鼻づまりには抗アレルギー剤、頭痛には鎮痛剤といった具合です。その症状だけは押さえ込めるかもしれませんが、患者が快方に向かうか否かは二の次です。

 子供が幼稚園に通っているころ、風邪で三十九℃以上の熱が出て、家人にせっつかれて病院に連れて行ったことがあります。対処療法としてもちろん解熱剤が処方されました。薬を飲ませるとうそのように熱は下がりましたが、どんどん下がって三十五℃にもなってしまい、冷たくなってぐったりしてしまってびっくりしました。数時間して薬の作用が切れてきた頃、再び熱が上がってきて返ってほっとした経験があります。

解熱剤が効いていた時間帯はたしかに熱は下がっていましたが、子供の症状は逆に悪化していました。それ以降解熱剤は子供も私も服用したことがありません。発熱は生態防御反応のひとつで、体温を上昇させることによって外的の細菌やビールスをやっつけているのです。体が一生懸命戦っている結果なのです。

 皆さん方も体に異常や故障が生じたとき、症状だけを押さえ込む対処療法ばかりに囚われないで、体を根本から快方に向かわせる対策をとってほしいものです。そのための方法のひとつとして、東洋医学的な病気の見方があることを知っておいてほしいと思います。
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