漢方の話
利水の生薬
水の配分に異常が生じた水毒の症状を調整する。

手足がむくんだり、ひざに水がたまったり、重度の肝障害で腹水がたまったりと、体内に余分な水分が停滞している時、西洋医学では利尿剤を使い、余分な水分を尿として体の外に排泄するための処置を行います。

一方、炎天下で汗をかきすぎたり、大量の出血や下痢などによって脱水症状を呈した時は、輸液療法(点滴など)で外部から水分を補充します。ドライアイなど局所に水分が不足している時は、目薬などによって水を補ってやります。

即ち、体内の多すぎる水は利尿剤で尿にして排泄し、不足している水は体外から補充するというやり方が西洋医学的治療方法です。

 一方、漢方では、体の中の水の分布状態が異常であるとき、「水毒」の症状とみなし、「利水剤」を投与します。

体の一部がむくんでいる人や脱水症状のある人は言うに及ばず、花粉症などのアレルギー性鼻炎で水様性鼻汁が止まらずティッシュペーパーを手放せない人、目から涙が出て止まらないのに、口の中は唾液が出なくて食べ物がのみこみにくいお年寄りなども体の中の水分の分布状態の異常として、水毒症状とみなし利水剤を投与します。

即ち漢方では水の異常が引き起こす病態を西洋医学よりもずっとずっと広範囲にとらえているのです。

 私たちの体の半分以上は水でできていますが、その水は@細胞の中、A細胞と血液の間、B血管の中(血液)と大きく分けて3つの部分に区別されて存在しています。漢方でいう水毒の症状では、この3つの部分に存在する水の配分に異常が生じたものとみなし、必要な部分に水を移動させてやり、水の配分を調節するのです。

西洋医学の利尿剤のように、余分な水を尿として体外に排泄してしまうだけでは、3つの部分の水の分配のバランスの崩れを直すことはできません。これができるのは、漢方の利水の生薬なのです。

これには白朮(ビャクジュツ)、蒼朮(ソウジュツ)、猪苓(チョレイ)、沢瀉(タクシャ)、茯ュ(ブクリョウ)、防己(ボウイ)、ヨクイニン、黄耆(オウギ)、麻黄(マオウ)などがあります。

これらを組み合わせた漢方薬には、五苓散(ゴレイサン)、苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)、ヨクイニントウ、猪苓湯(チョレイトウ)、防己黄耆湯(ボウイオウギトウ)など多くの種類があり、患者さんの体質や症状に応じて使い分けられています。

私も10年くらい前、出産後ひどいドライアイになり、夜中授乳時に目を開けようと思っても痛くて開かず、このドライアイがひどくなると頭痛までおこってしまいました。内科を受診すると、まず涙量を測定され、標準値より少なかったので「たしかにドライアイですね。目がかわいた時にこれを使ってください。」と市販の目薬の3、4倍もあるような大きな目薬をわたされました。これといった治療もなく、もらったものは目薬だけ。その目薬を使っても症状が改善されるのはほんの数分だけのことで、ドライアイからくる頭痛などは全くとれません。

そこで漢方の苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)を飲みましたら、尿量が多くなり、ドライアイとともに皮膚の乾燥や頭痛までとれ、目薬を持ち歩く必要もなくなりました。約半年くらい服用を続け、すっかり症状は改善されました。

いつだったか、朝起きた時、ずいぶん顔がむくんで、まぶたが腫れて目が開きにくく憂うつな気分でこの苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)を飲んだところ、15分ほどして軽い下痢症状がおこり、あっという間にむくみは取れてふつうに出勤できたことがありました。それ以来、この薬はいつも持って歩いています。

日本の気候は湿度が高く、体の中の水の異常がおきやすい土地風土です。いろんな症状に漢方の利水剤をためしてみると、意外な効果が期待できるかも知れません。

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