漢方の話
花粉症の季節の小青竜湯
花粉症に漢方でよく使われるのが小青竜湯(しょうせいりゅうとう)です。

花粉症のひとにとっては、また嫌な季節がやってきました。近頃、花粉症の人がずいぶん増えて、このままゆくと5年後には2人に1人が花粉症ということになるそうです。

 花粉症は、植物の花粉によって起こるアレルギー性の疾患で、日本の場合8割が杉の花粉が原因と考えられています。

杉林に囲まれた三重県美杉村の私共の家ではこの時期、駐車しておいた車は花粉のためにうすい黄色に、廊下は指で字がかけるくらい花粉が積もります。杉の木立の上を風が吹き抜けると、風が黄色く見えます。あたり一面すっぽりと花粉に囲まれた状態になってしまいますが、近所に花粉症で困っている人はほとんどいません。

杉が花粉症の原因と目の敵にされているのですが、杉にとっては大きな迷惑です。

花粉と大気汚染の両者がそろって初めて花粉症の症状が出るのです。

 症状は、くしゃみ、鼻水、目のかゆみと、風邪の症状によく似ていますが熱はなく、いずれの症状も生体防衛反応で異物を排除しようとする症状です。

こんな時に漢方でよく使われるのが小青竜湯(しょうせいりゅうとう)です。

 小青竜湯は今から約2000年ほど前の中国の古書「傷寒論」「金匱要略」にその使い方が掲載されています。

麻黄(まおう)、桂枝(けいし)、細辛(さいしん)、乾姜(かんきょう)、半夏(はんげ)、五味子(ごみし)、芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)をいっしょに煎じた液を服用するのですが、最近は、もっぱらエキス剤が用いられています。

傷寒論の中には「傷寒、表解せず、心下水気有り、乾嘔発熱して咳し、或いは渇し、或いは利し、或いは小便不利、小腹満たし、或いは喘する者、小青竜湯之れを主る。」と記載されています。

もちろん2000年前には、風邪や花粉症という病名はありませんでした。この本文の内容から現在の花粉症に使えるのではないかと推測され、実際に応用してみると、効果てきめんだったので広く使われるようになったのです。

 うすい鼻水、くしゃみ、涙や唾液が多い、泡のような咳、喘鳴、発疹などがある時、小青竜湯を使うとよく効きます。風邪のひきはじめで、透明な鼻水の多い症状は、小青竜湯が適する状態です。

「葛根湯」の項を参照して、使い分けていただくと、初期のうちに風邪をシャットアウトするための有力な味方になることでしょう。

 私自身の経験においてもこの小青竜湯は欠かすことはできずいつもバッグの中にいれて持って歩いています。

 基礎医学の研究に従事している仕事柄、実験動物を取り扱うのは、日常の大切な業務なのですが、この仕事をはじめて5年目くらいからネズミに対するアレルギーがでて、動物実験室にはいるとそれはひどいくしゃみ、鼻水、目のかゆみが発症し、喘息が止まらず次の日は体がだるく、思考力が減退してしまいます。

こんな時には早目に小青竜湯を少し多目に飲むか又は、あらかじめ仕事の前に服用しておくと、これらの症状がずいぶん軽減されます。

市販の西洋薬の抗アレルギー剤に比べると効果はマイルドかも知れませんが、眠くなることもなく、仕事にさしさわりがないので、私はもっぱら小青竜湯を愛用しています。

ただし、胃の弱い方は空腹時の服用は避け、胃の中に少し食べ物をいれてからのんだ方がいいのかも知れません。機会があれば一度おためし下さい。
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