牛蒡(ごぼう)

ごぼうはユーラシア大陸の北部に広く自生しています。日本には10世紀以前にごぼうの種が薬として中国から伝わりました。牛蒡子(ごぼうし)と呼ばれ、漢方では抗菌作用、解毒作用、利尿作用、血糖値降下作用のある薬として使われています。好奇心旺盛な日本人がその種を植えてみたところ、根もまた美味しいものだと発見し、栽培するようになりました。世界広しといえども牛蒡を食用にしているのは、日本人だけのようで、シャキシャキした歯ざわりと独特の香りが欧米人には合わないらしく、「日本人は木の根を食べている」と思われているようです。この独特の歯ごたえは、炭水化物の一種のイヌリンと繊維質のセルロースです。健康維持のため食物繊維をたくさん摂りましょうと呼ばれている今日、牛蒡の中の食物繊維は、野菜の中でもトップクラスの含有量で、腸の掃除をしてくれるので便通がよくなります。

ところがこの牛蒡、店頭に並んでいるものは中国産がずいぶん増えてきました。日本人が中国で現地の人を指導して、日本向けの輸出用に栽培されたもので、国産物に比べ値段が安く規格がそろっているのが特徴です。この中国産の牛蒡に残留農薬発が性物質が検出され、新聞紙上をにぎわしたのはつい最近のことなのですが、今ではほとんど忘れられているようです。のどもと過ぎればすぐ忘れてしまうのが、日本人の悪い性質なのでが、普段口にするものの安全性には常に注意を払ってゆきたいものです。

店頭に並んでいる牛蒡は1メートル以上もある長くてまっすぐなものが多いのですが、どうしたらあんなにまっすぐ地中に根を下ろすことができるのかご存知ですか。大規模栽培農家では、ロータリートレンチャーという大きな円盤状の刃で畑の畝を1メートル以上も深く掘り起こしその上に種を蒔きます。収穫 時には、ルートディガー(根の掘り取り機)で畝の土を深くきり崩して牛蒡の根を浮き上がらせて抜きやすくします。牛蒡の栽培は難しいようです。

牛蒡にもいろいろな種類があり、料理に一番よく使うのは瀧野川牛蒡。長さ1メートル、太さ2~3センチで長根牛蒡の代表品種です。江戸時代の初めから東京の滝野川付近で栽培されていました。この滝野川牛蒡を特殊栽培したものが堀川牛蒡で、長さ50センチ、直径が6~9センチと太く、真ん中に穴が開いており、これに詰め物をした料理は京都の正月には欠かせないものです。千葉県の大浦牛蒡も中に空洞のある品種ですが、栽培量はわずかです。

大阪には郷土野菜として河内平野で栽培されている葉牛蒡があります。福井県の越前白茎牛蒡と同じ系統で春先から今頃にかけて関西を中心に出回り、柔らかい葉柄と 若い根を食べます。香りが高いのが特徴で、春を届けてくれる野菜として親しまれていますが栽培地を少し離れると、蕗と間違う人も多く、料理法は一般に知られていないようです。

今回表紙絵になっているのは「新牛蒡」で初夏に出回るので夏牛蒡とも呼ばれています。直系1.5センチ前後で柔らかく香りもよいので柳川鍋には欠かせません。

牛蒡は乾燥すると堅くなり、うま味や香りが抜けてしまいます。泥つき牛蒡は新聞紙に包んで冷暗所で保存して下さい。