高コレステロール血症を考える


★高コレステロール血症を考える

誰もが信じているまちがい栄養学

高コレステロール血症を考える

たとえば、たまたま血液検査を行う機会があり、コレステロール値が高いといわれたらあなたならどうします?コレステロール値が高いとどんな問題点があるのでしょう?

高コレステロールが体に良くない理由

まず、コレステロールが高いとからだに良くない理由として、「血液がどろどろした状態になるので血管が痛みやすく、脳卒中を発症しやすい」と一般に考えられています。いかにもそれらしいのですが実はまちがい。「ブー」!です。
高コレステロール血症の人は、心疾患は発症しやすいのですが、脳卒中による死亡率は逆に減ります。

高コレステロールの人のほうが寿命が長い

身近なところでの統計結果ですが、大阪府内で1万人を対象に10年間継続して調べたデータがあります。それによると、コレステロールの高い人は心疾患にかかりやすいが、癌による死亡率は少ないという結果です。男性では、コレステロール値が240~280の人の死亡率がもっとも低く、癌や脳卒中による死亡率も低かった。一般の病院で検査をすると、コレステロール値が250以上の人は病名を「コレステロール血症」と診断され、コレステロールを下げる薬を出されます。服用すべきか否か?むずかしい問題です。

コレステロール値が高いときの誤った食事療法

ふつう、コレステロールの高い人に行われている食事指導として、
(Ⅰ)卵や動物性脂肪はコレステロール値を上げるので控える。
(Ⅱ)バターの代わりに植物性油やマーガリンを使う。
などの内容が浮かんできます。医学や栄養学に関係した仕事をしていない人でも、この程度のことなら答えられるくらい一般常識としてまかり通っている知識なのですが、これもまた「ブー」!まちがいです。

このような食事指導は無効であるばかりか、しばしば有害であるという結果が出ています。フィンランドで行われた調査なのですが、上記の食事指導の内容を実践した結果、心疾患による死亡率が2,4倍に増加したという報告があり、寿命は短くなってしまいました。

高コレステロールのための食事指導を守ると心筋梗塞が増える理由

コレステロールは、体内でさまざまなホルモンを合成するための原料になるばかりか、私たちの体をつくっているひとつひとつの細胞の膜を形成するのになくてはならないものです。もっぱら悪玉視されているコレステロールですが、実は大切な生体の構成成分なのです。また、コレステロールが高いからと敬遠されがちな食品の代表に卵が上げられますが、卵を食べることによって上昇するのはHDLコレステロール(善玉)で、体内で増えても有害性はなく、返って有益な作用を及ぼします。

ではどうして食事指導を守ると心筋梗塞が増えるのでしょう?原因はリノール酸にあるようです。

現在の日本人の、1日のリノール酸の摂取量は必要量の5~6倍になっており、明らかにリノール酸摂取過剰です。その上食事指導で、マーガリンや植物油を多く使うよう指導すると、さらにリノール酸の摂取量が上がります。体内にリノール酸が増えすぎると、血液が固まりやすくなり、また動脈硬化を発症しやすい土壌を作ってしまうのです。

店頭に並んでいるスナック菓子には、「植物油使用」とでかでかと書かれたものがあり、高コレステロール血症の人は「植物性」という言葉に弱く、ついつい手を出しがちですがご用心!リノール酸は植物油を使った食品に多く含まれ、もちろんスナック菓子にもたくさん含有しています。

コレステロール値が高い人の正しい食事療法

高コレステロール血症による心疾患の予防には、植物油ではなく魚の油が有効です。週に2,3回以上魚を食べる。ただしてんぷらや揚げ物にしないことが大切です。もちろん動物性脂肪は少ないほうがよく、野菜をたっぷり摂ることです。

用語の説明

HDLコレステロール
血管や体の組織から、余分なコレステロールを回収する働きがあることから、善玉と呼ばれています。数値が低いと心筋梗塞になりやすい。数値を上げるには運動が効果的とされています。

リノール酸
紅花油、大豆油、コーン油などの植物性油に多く、人体に不可欠な必須脂肪酸の一つ。コレステロールを下げると言われていましたが、長期的に見るとそのような作用はなく、過剰に摂ると、アトピー性皮膚炎をはじめ様々なアレルギー疾患が増えるといわれています。

★いま人気の”健康油”って本当に体にいいの?

○体に脂肪がつきにくい油・ジアシルグリセロールに関する研究報告
2003年2月に発行された「Journal of Nutritional Science and Vitaminology」に、「体に脂肪のつきにくい油」として最近よく売れている食用油の実験成績が論文として出されました。その要約を以下に報告します。

<ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロール投与のラットの糖質と脂質代謝の比較>
帝塚山学院大・人間文化   杉本智美他

体に脂肪のつきにくい油として、最近ジアシルグリセロール油が市販され売上を伸ばしている。この油と従来から市販されているトリアシルグリセロール油を餌実験動物に投与し、糖質、脂質代謝関連の生化学データを比較した。

7週齢(若齢)と8ヶ月齢(老齢)のラットにジアシルグリセロール油またはトリアシルグリセロール油を餌の中に10%混ぜたものを与え、1、4、8、12週目に種々の測定を行った。

その結果、どの飼育期間に於いても体重、腎臓周囲の脂肪組織、摂食量あたりの体重増加率は、ジアシルグリセロール油またはトリアシルグリセロール油の間に差は無かった。また、血漿、肝臓のトリグリセロール値にには差が無かったが、血糖と遊離脂肪酸値は、若齢ラット、老齢ラットともにジアシルグリセロール油投与群でトリアシルグリセロール油投与群より高かった。老齢ラットにジアシルグリセロール油を8週間投与した群では、空腹時の血糖とインスリン値が高く、耐糖能の低下が観察された。

結果・・・・・
この実験結果では、店頭でうたわれているようなジアシルグリセロール油によるコレステロール値の低下や、抗肥満作用は認められず、逆に長期の投与で耐糖能低下による糖尿病の危険性が誘発される可能性が明らかにされました。

健康油の安全性、効果については、まだまだ疑問点が多いようです。家庭での使用はもう少し様子を見たほうがよさそうです。