夏の食養生について


今回は漢方薬のお話ではなく、中医学からみた夏の食養生についてお話します。

じめじめうっとおしい日が続くかと思うと突然照りつけ、気温と湿度の両方が高くなると、耐えがたい蒸し暑さになる。この時期食欲がなくなり夏負けの第一段階に入ります.昨年の猛暑では、体調をくずした人がずいぶん多かったようです。とりわけ涼風が吹きはじめる9月になってガックリと体力がおちてしまうのです。

中医学によれば、夏季は「天は熱く、地は火となる。その性は暑」という。
夏は大量に汗が出て水分と栄養を消耗するので、体液のバランスがくずれ、代謝が乱れやすくなります。とりわけ水分の補給のしかたをまちがうと、体調をくずし、夏バテの原因になります。

夏季に適した飲食はどのようなものかと言いますと、肉類は少なめに、冷たい和物や卵料理、豆製品、胡麻、緑豆、新鮮な野菜(瓜類なすなど)をしっかりとり、ニンニク、しょうが、からし、しそ葉などを適当にあしらい、殺菌、胃腸機能増進をはかります。

その他、注意したい点を箇条書きにしてみました。
料理には酢を使う
夏には大量のビタミンCが必要となります。調理時に酢を使うことにより、口あたりが良くなるだけでなく、ビタミンCの働きも保護することになります。また同時に殺菌、解毒、腸管の伝染病予防にも効果があります。

暑い日の水分補給に薬用茶を飲む
夏場はいつもジュウヤクと煎じハトムギを同量加えたものを煎じたお茶を飲んでいます。ふつうにムギ茶をたくときの要領で沸騰してから5分くらい煮出したものをこして冷蔵庫に冷やしておき、水分補給にたびたび飲みます。

これだけのことで、皮膚の表面にできた小さいイボなどはとれますし(ハトムギのいぼとり効果)、ジュウヤクの毒消し作用で便通も快調です。ただし、ジュウヤクは、体を冷やす作用があるので、どちらかというと冷え性タイプの私はこのお茶は夏場だけにしています。

冷たい飲み物を大量に飲まない
暑いとついつい冷たいもの(食事の時の冷菜ではなくアイスクリームとか氷などの冷菓や冷たい飲料水)をとりすぎてしまいますが、そのため胃腸の機能がおとろえ、食欲がなくなり、夏バテをひきおこします。

真夏に気温40度以上になるインドを旅したことがありますが、とにかく暑くて暑くて、冷たい飲料ばかり飲んでいました。冷たいものは飲めば飲むほどもっとほしくなり、水腹で体は重く、すっかりバテてしまいました。まわりのインド人は家庭に冷蔵庫を持っているわけでもなく、炎天下の道ばたで熱いチャーイ(インド風ミルク紅茶)をすすっていました。私も現地の人を見習って、熱いお茶をすすってみると、不思議とのどのかわきがおさまった経験があります。
暑い日に、濃い目の紅茶をすすってみる。今年は一度体験してみて下さい。

冷たい生ものの食べすぎには注意する
中医学では、胃は暖を好み、寒を嫌う。と言われています。中国の有名な医者孫思バクは「老人は疾患が多い。これはみな、若い頃、春と夏に冷たいものを食べすぎたせいである。生野菜、生肉、なまぐさくて冷たいものは人体を損なうので食べないのがよろしい」とまで言っています。

同時に冷たい和物料理を食べるには、食品衛生が大切です。変質や、調理時の汚染に十分気をつけて下さい。

今年の夏も昨年に増して猛暑がつづくかも知れません。地球温暖化現象のせいで、年々暑くなっていることは確かです。食生活のバランスをととのえ、暑さをはねかえす体力をつけて夏の到来にそなえて下さい。