Recipe-1:漢方薬酒・お屠蘇


お屠蘇のいわれ
屠蘇散は西暦200年ころ、中国の名医「華陀(かだ)」によって考案されたもので、時の皇帝に厄除けと長寿の目的で献上された薬です。日本では嵯峨天皇(810~820年頃)のころから元旦に宮中の儀式として用いられたのに始まり、だんだんに一般に普及し、新年の儀式として行われるようになりました。

屠蘇(屠・・葬り去る、追い払う。  蘇・・魂を蘇らせる。)の意味は、年中の災いを避け、福寿を招くというもので、大晦日の日中にみりんの中に屠蘇散を浸しておき、元旦の朝に飲みます。

(普段料理に使っているみりんは合成のものが多いので、これを直接飲むということはほとんどありませんが、昔ながらの製法で作られたみりんは甘酒のようなまろやかな味でそのまま飲んでもおいしいものです。屠蘇散を漬けるのは普通の清酒でも良いのですが、酒にみりんを加えることによってお酒の飲めない女性や年少者にも飲みやすくなります。)

屠蘇散は、若い人のエネルギーを年長者がいただくという意味をこめて、若い者から順に年長者に杯を回します。

屠蘇散が考案されたのはずいぶん昔のことですから、その内容はいろんな書物でそれぞれの記載に異同があり、処方の構成についてはっきりしたことはわかりません。

現在我が国で一般に用いられているのは、ビャクジュツ、山椒、桂枝、防風、桔梗を各3グラムずつ、細かく刻んで、白絹またはあかね染めの三角の絹袋に入れ、みりんの中に浸しておくと、翌日には女性や子供でも飲めるようになります。

屠蘇散に入っている生薬とその薬効
ビャクジュツ キク科オケラ、オオバナオケラの根
健胃作用のほか鎮痛利尿作用
山椒(サンショウ) ミカン科山椒の実
健胃、整腸作用。寒気を取り去る
桔梗(キキョウ) キキョウ科キキョウの根
去痰作用、鎮痛、鎮静、解熱作用
桂枝(ケイシ) クスノキ科ケイの樹皮
健胃、風邪薬として作用
防風(ボウフウ) せり科ボウフウの根
頭痛を取り、発汗、去痰作用

それぞれの薬効からもわかるように、本来この薬は、冬場にかかりやすい風邪や胃腸障害、感染症などの予防や治療に役立ちます。

現在、薬店などで販売されている屠蘇散の中には上記のもの以外に、陳皮(チンピ・・・みかんの皮)、丁子(チョウジ)といった香りの強い生薬が入っているものが多く、芳香性の健胃作用を発揮します。慣れないうちは香りが気になるかも知れませんが、慣れてしまうとはまってしまいそうな味です。

屠蘇を漬けるのは日本酒やみりんだけでなく、焼酎やワインにつけても意外な風味が生まれます。中国から入ってきた薬膳料理は、普段の食事で病気治療や健康増進をはかることを目的としていますが、料理だけでなく、さまざまな漢方薬を漬け込んだ薬酒もうまく組み合わせて使います。

漢方薬は普通は水で煎じ、水と一緒に服用しますが、漢方薬の有効成分の中には、アルコールに溶け出しやすいものも多く、酒の中に薬を漬け込むのは、上手な利用方法だと思います。冬場の健康維持のため、毎日の晩酌のお酒の中に屠蘇散を漬け込んでおくのも名案だと思います。


とっておきの漢方薬酒のレシピを紹介します
酒で体を温め血行を良くし、同時に漢方生薬との相乗効果で美容と健康に良いとされる薬酒で、楊貴妃が愛飲したという秘伝のレシピです。
楊貴美酒
<材料>
トウキ       15g
ボタンピ       7g
リュウガンニク    7g
コウカ       10g
ハッカヨウ      5g
ハッカヨウ      5g
ホワイトリカー  1リットル
シャクヤク      8g
ブクリョウ    15g
コウブシ       7g
サンシシ      5g
サイコ       5g
タイソウ     10g
グラニュー糖  150g
蜂蜜       80g

<作り方>
1、生薬は刻んだものを使います。

2、洗った広口ビンに生薬を入れ、ホワイトリカーを注ぎふたをし軽くゆすります。

3、日のあたらない涼しい場所に保管し、4~5日間は時々揺すってやります。

4、10日ほどたったら甘味料を入れよく溶かし、1ヶ月くらい寝かせます。

5、1ヶ月後、漉して別のビンに移します。(飲むときに気にならなければ生薬は漉さなくても良いのですが少々えぐみが出てきます。)


<効用>
生理不順、血行不良、貧血、美容、保健強壮