ほうれん草


 アカザ科の1,2年草。もともと西南アジア原産でペルシャ、アラビアを経て15世紀ごろヨーロッパに普及しました。アメリカでは19世紀初めから広く栽培されるようになり、主に缶詰加工用として一般の人たちに広まりました。ここであの有名な『ポパイ』の漫画が登場するのです。『ポパイ』を見ていると、元気の出ないとき、ほうれん草の缶詰さえあればたちどころにスーパーマンに早代わりできるかのような錯覚に陥りますが、日本ではほうれん草の缶詰は市場にはなく、生鮮野菜として販売されています。

 わが国には、江戸時代末期に中国から東洋種が伝わり、明治以降に西洋種が入って来ました。店頭に並んでいるのは、夏場は西洋種、冬場は東洋種、またその雑種もたくさん作られており、年中ほうれん草が絶えることはありません。しかし、ほうれん草は元来冬の野菜で、耐寒性が強く、霜にあたると甘味が増すので、12月から4月くらいが旬になります。中でも、根の赤いものは柔らかくあくも少なくおいしいのですが、最近はそういう品種がめっきり少なくなったのは寂しいことです。どんな野菜も、旬がなくなるとおいしくなくなるという傾向にあるようです。

栄養的にも優れた野菜で、緑黄色野菜の代表としてあげられるように、ビタミン類、鉄分、クロロフィルの含有量が多く、ほうれん草100gで、これらの成分の成人男性の1日の必要量はじゅうぶんだというほど栄養価の高い野菜です。消化も良いので、虚弱体質の人の体質改善に、病人の栄養補給に最適です。根元の赤い部分には、マンガンが多量に含まれており、骨の形成、肝臓の機能強化、神経のバランスを整えるなどの働きがあります。

 尿路結石の原因やカルシウムなどのミネラル成分の吸収を阻害すると言われているシュウ酸の含有が高いのが難点ですが、結石予防の食事法というのがあります。体内で結石ができるのは、カルシウム1に対しシュウ酸2の割合になったときだけですので、カルシウムを少しでも多くとっていれば大丈夫。カルシウムを多く含むゴマを使った「ほうれん草の胡麻和え」や、同じくカルシウムたっぷりの牛乳を使った「ほうれん草のクリームスープ」などは最適の料理法。鰹節の中に含まれるリジンというアミノ酸には結石の予防効果があるので、ほうれん草にふりかけてたべるのがよろしい。また、ゆがくなどの下処理をすることによってシュウ酸はある程度は抜けますので、大量に摂らなければ心配いりません。