しめじ

20年くらい前の話になるが、奥穂高に旅した時「ホンシメジ」を食したことがある。ひなびた山奥の一軒宿の夕食に出されたのである。

その日ちょうど宿の主人が山に採集に行った折みつけたものだそうで、その頃でもめったに見つからない珍しいものになっていた。泊り客も少なかったので、夕食の膳になってでてきたようだ。

その日にあったことをたわいもなくしゃべりながら、旅仲間と夕食の膳をつついていたが、このホンシメジを口の中にいれてとたん三白眼になって顔を見合わせた。お互い「何これ?」というびっくりした表情。

何とも表現しがたいおいしさ。口の中に広がる芳香。今だに忘れられない味だが、それから現在まで「ホンシメジ」には再会できずにいる。

一般に「シメジ」として売られているものはヒラタケで、「ホンシメジ」の名で売られているものはブナシメジである。

「香りマッタケ味シメジ」と称されたのはホンシメジのことで、これは栽培ができないので一般の食卓にのぼることはほとんどない。マッタケ以上に手に入りにくいものである。

ヒラタケ、ホンシメジともに、成分の90%は水分で、タンパク質が3%、炭水化物が5%ほど含まれている。目をみはる様な栄養成分はないので、ひと昔前までは注目されなかったが、最近は、低カロリー食品、食物繊維の宝庫として脚光をあびている。

料理法としては油料理が合う。
バターいためなどは美味だし、またきのこ独特のうま味は、火を通すことで生まれてくる。しかし弱火でゆっくり煮含めると身がやせてうま味がなくなるだけでなく、せっかくの歯ざわりもなくなってしまうので御用心