牛乳は体にとって良い食品か?


誰もが信じているまちがい栄養学

★牛乳は体にとって良い食品か?

①牛乳の消費量の多い地域は?

ヨーロッパ諸国は日本に比べ冬が長く気温も低いため、野菜などから栄養素を摂ることが難しいので、肉や牛乳から必要な栄養分を補っています。牛乳は、北緯40度以上に位置する国々で消費量が増えてゆく傾向にあり、肉や牛乳の消費量の多い国ほど結腸癌、直腸癌の死亡率が高いという統計的データが出ています。

日本人の平均寿命は近年著しく伸びました。それにつれ、死亡原因のトップは、「脳血管障害」から悪性腫瘍「癌」に交代しました。癌の種類から見ると、昔多かった胃がんの死亡率は1960年以降横ばいですが、最近富に大腸がんが増えてきています。これは、経済成長に伴って肉や牛乳の消費量が著しく伸びたこと、即ち食事内容の変化と関係ありそうです。

②食べすぎは健康の敵

第2次世界大戦後の日本人は大半が栄養失調で、アメリカから救援された小麦のパンと牛乳で命をつなぐことのできた子供たちもずいぶんいたことでしょうが、その頃といまとでは栄養事情に随分差があります。

今、増え続けて問題となっている糖尿病、肥満、高脂血症の原因の大部分は食べ過ぎにあります。動物は体調の悪い時、回復するまで何も食べずうずくまっています。逆に人間は、病気になると、まわりの人からも栄養価の高い食品を勧められ、無理にでも食べる傾向があります。食べ物を消化吸収するために体はかなりのエネルギーを消費し、弊害もこうむっていることを忘れてはいけません。体調の悪い時、食べることが逆療法につながることもあります。

③牛乳の成分

動物の乳と人間の乳とでは成分に大きな違いがあります。人間は脳を発達させることが一番重要な課題ですので、人乳には必須脂肪酸のリノール酸やリノレン酸が多く含まれています。動物は外敵から身を守ることが大事ですので、筋肉や骨格を発達させるために必要なたんぱく質とカルシウムが人間の乳よりはるかに多く含まれています。子牛や子馬が生れ落ちて数時間で立って歩く場面を、テレビの映像などでご覧になったことがあると思います。牛乳は牛の子供にとって完全栄養食であるかもしれませんが、人間の子供、ましてや成長してしまった人にとって必ずしも必要な食物とは言えません。

④牛乳を飲むとおなかゴロゴロは?

牛乳の中の乳糖に対して、適応性のない人、すなわち腸の中に乳糖を分解する酵素を持たない人が日本人の中には比較的多いことがわかっています。こういう人たちは牛乳を飲むと、おなかがゴロゴロ鳴ったり下痢をしたりします。幼児期まではほとんどの人がこの乳糖分解酵素を持っていますが、成長するに伴って不要になるためなくなってしまいます。成長したあとは、乳糖が必要な栄養素ではないことを体が知っているのかもしれません。

某大手メーカーの牛乳の汚染で多くの人が下痢症状を起こし社会問題になったニュースは耳新しいことですが、あの事件のときも、もともと牛乳で下痢を起こしやすい人が日本人には多くいるため、牛乳の汚染に気づくのが遅れたことが被害の拡大につながったとも考えられます。

⑤乳酸菌は善玉菌の代表選手

腸内細菌の中でもビフィズス菌と並び善玉菌の代表として揚げられる乳酸菌には、最近さまざまな有用な作用が発見されています。便秘解消、免疫力強化、肝機能改善、コレステロール低下作用などありがたい効果が目白押しです。

この乳酸菌には驚くほど多くの種類があり、牛乳にだけ含まれているのではなく米糠の中や味噌の中にもあります。ぬか漬けが何年も腐らずに保てるのは、乳酸菌が他の雑菌の繁殖を抑えているからです。私たちの腸の中でも同様に、乳酸菌により他のいろいろな悪玉菌の増殖が抑えられています。日本人は元来農耕民族なので、食物も動物性より植物性のほうが体にあっています。したがって、牛乳より米糠や味噌の中の乳酸菌のほうがわれわれとは相性が良いようです。

⑥牛乳をたくさん飲むと背が高くなる?

牛乳を好んで子供に飲ませようとするお母さんの中には、子供が大きく成長することを望んでいる人が多いのですが、『牛乳を飲むと背が高くなる』って本当でしょうか?

私の主人の実家は運送業を営んでおり、主人は小さいころから牛乳が好きで毎日2リットル以上飲んでいたようです。配送で残った牛乳がいつもたくさんあったので、お母さんは牛乳風呂、主人は飲用にと牛乳漬けの毎日だったそうです。お母さんは70台後半ですが顔にしみやしわも無くきれいな肌をしているので、牛乳の効果かな?と思えますが、主人の身長は平均以下で決して背が高いとはいえません。いまだに牛乳は好きなようでよく飲んでいますが、いまさら背が伸びるとは思えません。

牛乳の中には骨を作るために大切なカルシウムはたくさん含まれていますが、カルシウムを体内で利用するために必要なビタミンDの含量が少ないのです。カルシウムを体内に有効に摂りいれるためにはカルシウム、プラス、ビタミンDとミネラルをバランスよく摂ることが必要です。牛乳より小魚や海草のほうがカルシウム源としては優等生です。

それに身長や体格が大きくなることは短命につながります。身近なところで長寿な方たちを思い起こしてみてください。金さん銀さんも小さなかわいいおばあちゃんでした。

いろいろなことを考え合わせると、日本人は昔からとても効率の良い栄養分の摂取を行ってきたものだと感心させられています。日本人の歴史の中で、ごく新しいところで入ってきた「牛乳」の信者になるより、昔から食べ続けてきた伝統食をもう一度見直してみませんか?