秋刀魚は回遊魚で、夏から秋にかけて、北海道から三陸、さらに南に移動します。そのため夏の終わりから晩秋にかけて獲れる秋刀魚が、一番油がのっていておいしいのです。一般に食用とされるようになったのは江戸時代のころからですが、1939年に秋刀魚が光に集まる習性を使用した漁法が開発され急速に普及し、大量に市場に出回るようになりました。「秋に獲れる刀に似た魚」という意味でこの名がつけられたそうです。
私個人の秋刀魚にまつわる思い出ですが、小学生の頃は、よく扁桃腺を腫らして高熱を出し、月に3日くらいは学校を休んだものです。さすがに高熱のある時は何も食べられないのですが、熱が下がると急におなかがすいて、母が「何食べたいのん?」って尋ねてくれます。そのたびに、「おかゆと秋刀魚とほーれんそうのおひたし!」と答え、その通りのものが出てくると、いつもの食卓ではなく、布団の中で、お盆に載って出てくる病人食をむさぼり食べたものです。食べ終えると、とたんに回復力が付いて、嘘みたいにけろりとしてまた学校に行く、ということを繰り返していました。
秋刀魚が無い季節に熱を出したときは、何を食べたのか全く覚えていないのですが、秋刀魚だけには不思議な愛着があります。日本人であれば誰しも、秋刀魚にまつわる思い出を多少なりとも持っているのではないでしょうか?夏の暑さが一転して、涼しい秋風に代わる頃、庭先で七輪を使って秋刀魚を焼く景色は、今はもう見られなくなった日本の風物詩のひとつです。
「おいしい秋刀魚の選び方」で「くちばしの黄色いものを選ぶ」ということを知ったのは10年くらい前のことでしょうか?最近は冷凍の技術が進歩して、品質のよい秋刀魚が年がら年中店頭に並んでいますが、くちばしの先がはっきりした黄色のものはやはり旬の生でないといけません。このほかの目安として、頭をもった時に垂直に立つものがいいのですが、店先で秋刀魚を持って逆立ちさせると、ぐにゃっとしていても買わないと気まずい雰囲気ですので、やはりくちばしの色を目安に購入するのが良いでしょう。
秋刀魚だけではなくこれからの季節、美味しいものがたくさん出回ります。